メニュー

舌下免疫療法

我が国におけるスギ・ダニ舌下免疫療法(SLIT 

   我国において、国民病とも呼ばれ、スギ花粉症に対する舌下免疫療法(Sublingual Immunotherapy : SLIT)の治療薬が2014年10月に発売されて、すでに3年目のスギ花粉シーズンが経過し、その安全性、治療効果、使用上の問題点などが明らかになってきた。

 それに続き、我国において、ダニ舌下免疫療法(SLIT)に錠剤が、世界に先駆けて発売されて、2015年12月に発売されて、すでに1年6ヶ月が経ち、世界共通のダニアレルギーに対して、世界約20カ国において承認・販売されている。

 このように、世界各国で、舌下免疫療法(SLIT)はこれまで施行されてき、皮下免疫療法(SCIT)に変わるより安全な治療方法として発展する状況に来ている。

現在は12歳以上からの治療対象であるが、まもなく2018年には5歳から使用可能となる適応拡大が近づいている。

また、ハウスダストとスギに重複してアレルギーをもつものが多いため、両者の併用について、使用法が確立されることが必要となってきている 。

 

 

1.アレルギー性疾患に対する免疫療法の歴史

世界で初めての免疫療法が、1910年、L.Noon,B.C、1911にLancetに発表して以来、アレルゲン免疫療法は100年を超える歴史を持っている。

図1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最初の治療法は、抗原を抽出して作った治療用ワクチンを皮下免疫療法(Subcutaneous  Immunotherapy:SCIT)で実施されが、注射のよる局所の疼痛やアナフィラキシーの恐れがあることになど副作用が大きな問題であり、これに変わるより安全な治療法の確立が望まれていた。

 

図2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 約30年前より、ヨーロッパを発信源として、これまで用いられてきた皮下注射用治療ワクチンを、舌下に大量に服用することにより、SLITより安全な治療方法として治療実績を上げてきた。

 WHO(世界保健機関)も、1998年、アレルゲン免疫療法を、対症療法とは根本的に異なる、疾患の根治も望める根本的な治療であること、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、重症を除く気管支喘息に適応があること。治療期間は、現状では、明確なevidenceの蓄積がないもの、これでの使用経験により3~5年必要であること、標準化抗原の使用が望ましいなどをPosition Peperにて公表した。(図1

図3

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2.スギ花粉症に対する舌下免疫療法(SLIT 

スギSLIT製剤『シダトレン』が発売されてから、すでに3シーズンが経過し、当クリニックにおいて、2017年12月までに、約500人が服薬を開始している。

 

⑴服薬率

治療1年目、2年目までの調査結果において、全期間を通じて、「90%以上服薬」できた割合は、それぞれ、92%および98%と極めて良好であり、中には100%を達成しているものもあり、非常に良く服薬が達成できることが確認された。

⑵治療効果

1年目のシーズンからその治療効果は早期に発現し、非常に良い+やや良い以上の割合は、治療1年目の94%から、治療2年目に95%を示し、治療効果に対する患者評価は極めて良かった。

⑶併用薬の使用状況

免疫治療は、根本的なアレルギー体質を改善することが目的であるため、これまで使用していた薬の使用量を減らせることが重要な治療目的である。

併用薬の使用量は、大部減少に成功した+少しでも減少できたものは、治療1年目が76%から、治療2年目には91%まで増加しており、免疫治療により91%が対症療法薬を減らすことが可能であり、中にはマスクもせず対症療法薬を使用しないで花粉シーズンをすごせるものも存在した。

 

 図4

図5

 

  図6

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⑷副作用発現

 副作用発現は、発売前に危惧された大切な事項であるが、これまでに重篤な副作用を経験することはなく、その多くは、舌下掻痒感、口腔掻痒感、舌下もが認められた。

 クリニックで使用した方の中で、全期間を通じて19.1%に生じ、初日発現率が5.1%であったが、その程度は、大部分が軽症で、抗ヒスタミン薬などを使用することも少なく、その持続期間もほぼ1か月で大半が消失した。

 

 

3.ダニ抗原(ハウスダスト)に対する舌下免疫療法(SLIT

ダニ抗原は全世界に共通の抗原であり、我国は高温多湿のため、ダニ抗原量の多い環境下にあり、ハウスダストによるアレルギー性鼻炎の発症も多く、発売以来、約200人が服薬をしている。 

服薬率・治療効果

服薬12ヶ月以上で調査した結果、90%以上服薬出来たものが94%と服薬コンプライアンスは非常に良く、100%服薬できたものも25%に達し、製剤が錠剤のため、何処でも持ち歩け、常温保存できるメリットによるものも一因であると分析した。
治療効果は、とても良くなった+やや良くなった以上の割合が95%に達し、治療効果は非常に良く、また自覚症状の改善度は良く、「鼻閉が減った」、「ホコリをかぶっても症状が出なくなった」、「睡眠の質が向上した」などQOLの改善を自覚できた症例が多く認められた。

⑵副作用

舌下腫脹、舌下掻痒感、咽喉頭掻痒感、咽頭違和感などが大部分であり、治療ワクチンが投与部位の粘膜で起こすⅠ型アレルギー反応によると分析された。特に、初日から副作用を認めるものが41.0%と多く、全期間においては79.0%に何らかの副作用を認め、その中で舌下腫脹を認める割合は19%と高いことが確認された。)

⑶併用薬の使用状況、自覚症状

12か月以上使用した時点において、併用薬は大分減らせた+少し減らせたが94%に達し、大半において他のアレルギー薬を減らすことが出来た。また、自覚症状の評価においても、JRQLQ(日本 アレルギー性鼻炎標準QOL調査票 NO.1)において、94%がQOLの改善を自覚でき、治療前後の比較においても、症状の程度が100から22.8に軽減を認めることが出来た。 

 

図7

図9

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 図10

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4.Question and Answer

 

⑴スギSLITとダニSLIT  の使用上の注意について

 これまでの使用経験で、現在使用しているSLIT製剤は、ダニSLITの方が抗原含有量が多いこと、アレルギー歴の違いなどのより、初日から副作用発現率、程度が高い事が分かっているが、副作用の継続期間は、スギSLITは1ヶ月、ダニSLITは2か月で消失する傾向があるため、治療開始時期の副作用の強い場合には、レスキュ―薬を使用することが必要である。

 特に、治療始時期の副作用の多い時期には、レスキュ―薬使用により、適切に副作用を取り除くことにより治療を中断しないよう、また、胸の苦しさ、息苦しさなど全身性の副作用を認める場合には、「嚥下法」を中止し「吐き出し法」により治療継続を試みるなどの対応が必要である。

 副作用の大部分は、投与開始1~2ヶ月が軽減する傾向にあり、投与開始3~6か月からは治療効果を実感する割合も増加し、治療へのモチベーションも高まり、服薬コンプライアンスも維持することが可能になる。

 

⑵SLITの併用は可能か?

図11

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皮下免疫療法(SCIT)においては、複数の抗原を同時に注射することが通常であったが、舌下免疫療法(SLIT)は、ワクチンの投与部位が同一部であるため、同時に併用を開始することは、現在、実施しないことが望ましいとされている。

 アレルギーの既往歴に、喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、薬物アレルギー、OAS、蕁麻疹など、また、何らかの抗原に対し強いアレルギー反応の既往がある場合には、併用が可能か、慎重に対象を選択する必要がある。

投与開始は、同時に治療を開始することは、治療初期に副作用が出やすいため避けるべきであり、追加する場合には、最初のSLITの副作用が消失した後、併用を開始する事が推奨される。
投与間隔については、現状においては、間隔を朝と夕のようにあけるのが望ましいとされているが、最初のSLITの副作用が消失した後、5分後に併用を開始しても、副作用は有意に増加しないとの報告も見受けられる。
また、レスキュー薬を完備する緊急体制を確立することが、より重要である。 

 

とめ

 舌下免疫療法が我国にされてその使用期間はまだ3年を超えた状況であるが、これまでの使用実績により、治療効果も、これまでの対症療法より高い結果が確認されており、治療期間も長く、手間のかかる治療法ではあるが、なにより根本的治療である点が、対症療法とは異なる。

 現在は12歳以上が適応であるが、2018年ダニ、スギSLITとも、5歳からの適応拡大が承認を待っている状況である。小児期からの早期介入、早期寛解が実現すれば、根本的治療としてアレルギーマーチの進展を阻止することも可能になると期待されており今後、我国の国民性にあったこまやかな免疫治療を確立してゆくことが必要である。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME