ながくらクリニック通信vol54(2014/9/2)
スギ花粉症舌下免疫療法(SLIT)の根本的治療ワクチン “シダトレン”が、が保険適応となり、発売が決まりました。
◆2014年9月2日、スギ花粉症の舌下免疫療法(SLIT)の薬「シダトレン」の薬価収載(薬に価格が決定されること)が発表されました。
①対象は、12歳以上のスギ花粉症の方です。
②維持期の薬代は、1日100.80円となりました。
(1か月の薬代は、約3,000円となりますが、これに保険が適応となり、30%負担の場合、薬代は約1,000円/月となりますが、実際には、受診、診察してから、処方が可能となるため、診察代、処方箋発行料などが別途かかります。
③認定された医師のみが処方可能となります。
④発売1年間は2週間しか処方出来ないため、発売1年間は2週ごとの通院が必要となります。
治療を受けるにあたっての注意
①スギ花粉症の方のアレルギーを根本的に免疫治療する薬です。
そのため、ハウスダスト、ブタクサ、カモガヤなど他の原因のアレルギーに対しては効果がありません。
②治療開始前に、血液検査(RAST検査)を受け、スギ花粉の抗体が陽性であることを確認する必要があります。
◆初診で来院し、当日からこの治療を開始することは出来ません。
③服薬初日は、院内で30分間、医師が安全を確認する必要があります。
④免疫治療は効果が出るのに時間がかかります。
そのため、毎日、長期間(3年~5年)の服用が必要です。
⑤来年(2015年)のスギ花粉シーズンに効果がでるためには、遅くとも10月~11月頃までに治療を開始して下さい。その他、不明の点などは、診察の際、お聞き下さい。
◆治療を開始する前に次の事項の確認をお願いたします。
(チェック項目)
□ スギ花粉症の症状に対してのみ治療効果があります。
□ スギ花粉の飛散時期以外も含め、長期間の治療を受けることが出来る。
□ スギ花粉の飛散期には、新たに治療を開始出来ない。
□ 1か月に1回(発売後1年間は2週間ごと)通院できる。
□ 毎日(舌下に2分間)服薬できる。
□ 治療の効果は個人差があるため、各人によりことなる。
□ 治療効果は継続するが、治療終了後効果が弱くなる可能性がある。
□ 副作用は、これまでの皮下免疫療法(SCIT)より重篤な(強い)副作用が起こりにくいという長所があるが、アナフィラキシ―などが起こる可能性がないわけではなく、その場合には対応が理解できる。
◆当クリニックで皮下免疫療法(SCIT)を受けている方に
◆スギ皮下免疫療法(SCIT)を受けている方へ
①現在、スギ皮下免疫療法(SCIT)を受けている方も、シダトレンの治療に移行することは可能です。
(スギ皮下免疫療法(SCIT)と舌下免疫療法(SLIT)を同時に受けることは、危険性があり実施できません。)
②シダトレンによる治療を開始する場合には、スギ皮下免疫療法(SCIT)が維持治療になっている方も、新たに2週間の『増量期』から開始することが必要です
◆スギとともにハウスダストなどの皮下免疫療法(SCIT)を受けている方は、
1.ハススダストの舌下免疫療法(SLIT)が、早ければ2015年後半発売見込みとなってきているため、ハウスダスト舌下治療薬(SLIT)の発売まで待つことが良いと判断します。
2.どうしても、 スギ花粉症の治療にシダトレンを使用したい方は、外来で診察時ご相談して下さい。
使用法
(シダトレン:インフォームドコンセント資料より抜粋〕
1.治療を受けられない方
2.治療に際し注意が必要な方
3.期待できる効果
4.服薬上の注意
5.副作用について
6.投与スケジュール
【まとめ】
◆スギ舌下免疫療法(SLIT)の治療薬“シダトレン”が、ついに発売されます。
◆アレルギー疾患の根本的治療として、皮下免疫療法(SCIT)は、1911年に報告され、100年をこえる歴史、実績があります。
◆これまで実施された皮下注射による免疫療法(SCIT)に比べ、舌下免疫療法(SLIT)は、自宅で出来る、痛みのない、通院回数も減らせる、根本的治療として注目されています。
◆免疫療法は、効果が出るのに時間がかかり、治療期間も、世界(WHO Position Paper)でも、3年から5年とされています。
◆対症療法の薬とは異なり、治療ワクチンを服薬することで、アレルギー体質が変わり、アレルギーを起こさない免疫状態に改善してゆきます。
◆正しく診断し、正しく治療しないと、効果が十分上がらないなどの注意点があります。
これまで、スギ花粉症の症状が強い方、治療で効果が十分でなかった方、根本的治療により根治を望む方などが、是非、この治療を受けていただくよう、検討のうえ、受診をお願いいたします。
(シダトレン薬価収載に際し、より良いアレルギー治療の発展のため今後とも、より一層努力いたしてゆく決意です。2014.9.2 )