ながくらクリニック通信vol43 (2012/6/6)
ハウスダスト(ダニ)に対する舌下免疫療法SLIT (Sub-Lingual immunotherapy)
アレルギーの治療について
Key word:舌下免疫療法・SLIT・・ダニ・ハウスダスト・減感作療法・舌下錠免疫療法・SCIT
その治療は、大きく分けて、
①対症療法
②抗原よりの回避
③免疫的治療
がありますが、最も根本的な治療法として、アレルギー性疾患に対し、これまでは、注射による皮下減感作(SCIT:Sub Cutaneous Immunothrapy) が行われきましたが、これに変わる、痛みのない、通院回数が減らせる、小児においても可能など、より受けやすい治療法として、舌下減感作 (SLIT: (Sub-Lingual immunotherapy )が取り入れられようとしています。
SLITに対する情報は、当HP(2010.7.31:舌下減感作 https://nagakura-ac.com/nct/nct_31.htm)を参考にしてください。
舌下免疫療法SLITの現状(2012年現在)
1. 2012年、日本においてスギ花粉症の対する臨床試験が終了しようとしています。
2. スギ花粉症の対するSLITは、臨床で認可の予定がたってきました(2014年)。
3. 世界的には、ヨーロッパ・USAにおいて、まずイネ科の花粉・ハウスダストなどに対し、SLITは滴下法(drops)が研究されはじめ、さらに舌下錠が開発・発売されています。
4. 現在、さまざまなアレルギー疾患に対し、経口免疫療法が適応されようとしています。
① アレルギー性鼻炎のみならず喘息に対し、また、食物アレルギー、職業性アレルギーに対しても、SLITが適応されようとしています。
② 注射による皮下減感作(SCIT)と比較して、疼痛がない・副作用が少ない・小児においても可能であるなどの多くのメリットを多く持つことにより、今後の早急な適応が望まれています。
●2012年、日本で、また世界でも、ダニ(ハウスダスト)に対する臨床試験(第Ⅱ・Ⅲ相)が行われます
◆今回の治験薬は、舌下錠(舌の下に1分間錠剤を保持したのち、飲み込む) で行われます!
SLIT in Europe & USA(2) | |||||||||||
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アレルギー性鼻炎の増加 『鼻アレルギーガイドライン2009』
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●アレルギー性鼻炎全体の割合は、2008年には、国民の39.4%にも上り、1998年の調査時の29.8%からと比較すると、10年間で約10%も増加しています。
アレルギー性鼻炎の有病率(年齢別) 『鼻アレルギーガイドライン2009』
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●低年齢層で通年性アレルギー(ハウスダスト・ダニ)が多く、30歳をこえると、花粉症(スギ・カモガヤ・ブタクサなど)の割合が増加する傾向が認めらますが、最近、スギ花粉症の低年齢からの発症の増加も重要視されています。
Drugs provide symptomatic treatment, whereas allergen avoidance and immunotherapy are the only therapeutic modalities which have the potential to modify the natural course of the disease.
薬は対症療法を提供し、アレルゲン回避と免疫療法は疾患の自然経過を修飾する可能性を有する唯一の治療様式である。
舌下免疫療法(SLIT)の進歩
1. 1990年ころより、ヨーロッパ(イタリアなど)で、皮下減感作(SCIT)治療エキスを、舌下に投与して治療効果があることが検証され始めた。
2. WHO見解書:1998
『喘息・アレルギー性鼻炎に対し、根治が望める、また修飾できる唯一の治療手段』 の1つと発表された。
3. WAO Position Paper 2009
4. 現在(2012年)、ヨーロッパ・USAでイネ科、ブタクサ、カバノキ・ハウスダストなどのSLITの臨床効果が確認されている。
5. 液剤(allergy drops)・錠剤での臨床適応が進んでいる。
現在市販されているSLITの錠剤(2012年現在)がある。
世界では、雑草(grass:イネ科など)のMixやダニ(ハウスダスト)の錠剤が発売されている。
Grass(雑草)Mixやハウスダスト(ダニ)の錠剤
医薬品として治療効果・安全性はまだこれから確認が必要であり、2012年5月現状では、舌下錠の治療薬として認可されているのは、イネ科(ティモシー)のみと思われる。
世界で流通しているSLIT製品は、滴下する液剤(drops)が、先に治療に用いられ、その後イネ科花粉に対し錠剤が発売されたため、他のアレルゲンに対しても治療効果のあるとした商品が、各国の事情により認可されたものが世界市場に流通していると思われる。
●治療薬としては、医薬品として正式に認可され安全な治療法の確立が必要である。
ハウスダストとダニ関係
住宅内のチリダニの増加
ハウスダストアレルギーは、密閉度の高い住宅の増加が大きな原因となっている。
日本におけるスギ花粉症に対するSLITの現状
1. スギ花粉症に対し、「スギ花粉症の舌下減感作療法の臨床研究報告書」が、2009年10月報告され、海外でのSLITによる治療と同様に治療効果・安全性が確認された(臨床試験Ⅱ相)。
(http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kanho/kafun/torikumi/SLIT_houkoku.pdf)
2. 2010年よりスギ花粉症に対し、臨床試験第Ⅲ相が、2012年まで2シーズンにわたり実施され、治療効果・安全性が確認されれば、近い将来、治療薬として保険診療の適応となる見込みである。
日本における舌下減感作(SLIT)のニュース
スギ花粉症の舌下減感作治療薬の開発準へー鳥居薬品 2010年3月16日
(http://video.search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&fr=top_ga1_sa&p=
%E9%B3%A5%E5%B1%85+%E3%82%B9%E3%82%AE+SLIT)
ダニアレルギーの 減感作(舌下錠)の開発について
塩野義 家ダニアレルギー性鼻炎薬開発へ 減感作で症状改善 舌下錠
公開日時 2010/09/08 05:00
塩野義製薬は9月7日、仏でアレルギー性疾患の免疫療法に特化して研究開発を行うスタラジン(Stallergenes)社が開発する家ダニによるアレルギー性鼻炎を対象とした免疫療法薬(舌下錠)について、日本と台湾で独占的な開発・販売権を取得したと発表した。11年上期に日本でフェーズ1を開始する予定。この薬剤は、独でスタラジン社が申請準備段階という。同社とは併せて、スギ(日本スギ)花粉によるアレルギー性鼻炎を適応とした免疫療法薬の共同研究・開発・商業化に関する契約も締結した。この免疫療法薬は、「特異的免疫療法」と呼ばれる作用を持つもの。抗原を少しずつ増量しながら長期にわたり投与し、抗原に対する応答を弱めていく減感作によって症状を改善すると考えられている。これまで皮下注射による治療は行われているが、まれにアナフィラキシーショックを起こすリスクがあり、そこで経口剤の開発が望まれていた。開発する舌下錠は、家ダニから原因の抗原を抽出して製剤化、口腔内で速やかに崩壊し、服用のしやすさにも配慮する。減感作治療薬としては、鳥居薬品が7月、スギ花粉のアレルゲンエキスを用いた舌下投与の液剤タイプの治療薬の国内フェーズ3を秋に開始すると発表している。13~15年度中の上市を目指している。
(http://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/39588/Default.aspx)
ダニを抗原とするアレルギー疾患を対象とした減感作(免疫)療法薬等に関するライセンス契約の締結について 2011年1月28日
ALK-Abello A/Sとのダニを抗原とするアレルギー疾患を対象とした減感作(免疫)療法薬等に関するライセンス契約の締結について 2011年1月28日鳥居薬品株式会社 鳥居薬品株式会社(本社:東京、社長:松尾 紀彦、以下「鳥居薬品」)は、ALK-Abello A/S(本社:デンマーク、社長兼CEO:Jens Bager、以下「ALK社」)と、ALK社が保有するダニを抗原とするアレルギー疾患(喘息およびアレルギー性鼻炎)を対象とした減感作(免疫)療法薬について、日本における独占的開発・販売権に関するライセンス契約を本日締結しました。また、この契約では、ダニアレルギーの診断薬も対象としており、スギ花粉を抗原とするアレルギー疾患を対象とした減感作(免疫)療法薬の製剤に関する共同研究・開発も行うこととしています。ALK社は、ダニを抗原とするアレルギー疾患(喘息およびアレルギー性鼻炎)を対象とした減感作(免疫)療法薬に関し、注射剤「AlutardR」および診断薬を欧州等で販売しており、現在、錠剤「MITIZAXR」を臨床試験中です。また、当社はスギ花粉エキスの舌下投与による減感作(免疫)療法薬の臨床試験を実施しており、今後、ALK社の保有する製剤技術・ノウハウを活用し、より利便性の高い錠剤の開発にも共同で取り組みます。
( http://www.torii.co.jp/release/2011/110128_02.html )
治験を実施するにあたって
治験をご存知ですか?
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